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竹資源を変える新素材とバイオマス需要

竹資源を変える新素材とバイオマス需要を象徴するイメージ画像

脱プラスチックとカーボンニュートラルの潮流を背景に、竹を燃料・新素材・食品へと転換する事業が各地で立ち上がっています。本記事では、竹資源活用市場の全体像、竹バイオマスエネルギーの技術課題、竹由来セルロースナノファイバーに代表される新素材の需要拡大、そして脱プラ・食品分野で進む国産回帰の動きを整理し、参入に向けた視点を報告します。

竹資源活用市場の全体像——6つの出口

竹資源活用市場は、単一の産業ではなく複数の異なる市場の集合体です。大きく分けると、竹チップ・竹ペレットを燃料とするバイオマスエネルギー、タケノコ・国産メンマ・竹パウダーなどの食品、セルロースナノファイバーや竹繊維などの新素材、竹集成材・内装材などの建材、竹製カトラリーや竹布などの消費財、竹林を活かした観光・体験の6つの出口市場に整理できます。

これらに共通するのは、原料の上流が放置竹林問題とつながっている点です。原料コストの大半を伐採・搬出・運搬が占めるため、どの分野でも竹林整備の仕組みと一体で事業を設計する必要があります。放置竹林の背景については深刻化する放置竹林問題と対策の最前線で詳しく報告しています。逆に言えば、整備体制を確立したプレイヤーは複数の出口市場に展開でき、上流を押さえることが競争優位の源泉になります。

世界に目を向けると、竹関連市場は既に大きな産業であり、民間調査では2023年時点で約600億ドル規模、2030年には約900億ドル規模へ成長すると予測されています。日本は原料を豊富に抱えながら製品を輸入する特異な位置にあり、輸入代替と輸出の両面で市場を取りにいく余地があります。

竹バイオマスエネルギーの現況と技術課題

竹バイオマスは、放置竹林から出る大量の竹材を燃料として活用する分野です。竹は成長が速く、単位面積あたりのCO2固定速度が高いため、カーボンニュートラルの観点から期待が寄せられています。熊本県などでは、竹を燃料とする熱電併給施設の稼働ノウハウが蓄積されつつあります。

一方で、竹燃料には固有の技術課題があります。竹はカリウムや塩素を多く含むため、そのまま燃焼させるとボイラー内部での付着(クリンカ)や腐食を起こしやすいという性質があります。このため、竹を燃料として安定利用するには、乾燥・粉砕・洗浄といった前処理や、他の木質バイオマスとの混焼といった工夫が欠かせません。

竹バイオマス燃料化の主な工程 伐採・搬出 放置竹林から 乾燥・粉砕 竹チップ化 前処理 カリウム・塩素対策 燃焼・混焼 ボイラー 熱・電 供給

図1: 竹バイオマス燃料化の主な工程。前処理での成分対策が安定稼働の鍵を握ります。

燃料用竹チップの取引価格はトンあたり数千円から1万円程度とされ、単価そのものは高くありません。そのため、量をまとめて安定供給する体制と、前処理コストをいかに抑えるかが事業性を左右します。エネルギー分野は「量を捌ける出口」として、他の高付加価値分野と組み合わせて活用するのが現実的です。

竹由来新素材の需要拡大——CNFという高付加価値

竹活用の中でもっとも付加価値が高いのが新素材分野です。代表格が、竹から取り出すセルロースナノファイバー(CNF)です。CNFは鋼鉄の数分の一の軽さで高い強度を持つとされる次世代素材で、大分大学発の竹由来CNF「CELEENA(セリーナ)」は、燃料電池や空気電池の電極材料など高機能用途での採用を広げています。放置竹林由来の竹材を高付加価値素材へ転換する好例として注目されています。

このほか、竹繊維を織り込んだ竹布、竹粉を混ぜた複合プラスチック、竹炭・竹酢液など、竹の特性を活かした素材開発が各地で進んでいます。新素材分野は研究開発から商用初期の段階にあるものが多いものの、単価はキログラムあたり数千円以上と、燃料用途とは桁違いの価値を生み出します。

竹の用途別の付加価値の目安(概念図) 燃料チップ 〜1万円/t 竹パウダー 数万円/t 国産メンマ 数千円/kg 竹集成材 高単価建材 竹由来CNF 数千円/kg超 竹の用途別の付加価値の目安(右ほど高付加価値)

図2: 同じ1本の竹でも、どの出口に振り向けるかで得られる価値は大きく変わります(概念図)。

この付加価値の差こそが、竹活用ビジネスの設計自由度の高さを示しています。稈の上質な部分を建材や素材に、残りをチップやパウダーに、幼竹をメンマにと使い分ける「カスケード利用」により、原料コストを複数の売上で回収する構造がつくれます。新素材の詳細は竹由来新素材の開発動向で報告しています。

脱プラ・食品分野で進む国産回帰

身近な需要拡大として見逃せないのが、脱プラスチックと食品分野の動きです。プラスチック資源循環促進法の施行以降、外食・ホテル業界を中心に使い捨てプラスチックの代替需要が高まり、竹製カトラリーや竹繊維パッケージへの引き合いが増えています。かつてプラスチックに市場を奪われた竹が、いまや逆にプラスチックを代替する側へと回りつつあります。

食品分野では、国産メンマの動きが象徴的です。国内で流通するメンマの約99%は輸入品とされてきましたが、純国産メンマプロジェクトへの参加団体が全国で拡大し、各地で発酵メンマやクラフトメンマの商品化が相次いでいます。放置竹林の幼竹を原料に用いるこの取り組みは、竹林整備と食品事業を一体化するモデルとして注目されています。近年は円安と輸入価格の上昇により、国産品の相対的な競争力も高まっています。

こうした消費財・食品分野は、新素材に比べて事業化のハードルが低く、キャッシュフローが早い点が魅力です。地域ブランドやストーリー性を打ち出しやすく、放置竹林という課題を前向きな物語に変えて発信できることも、マーケティング上の強みとなります。

参入に向けた3つの視点

竹資源活用ビジネスへの参入を検討する際に重要となる視点を、3つに整理します。

第一に、上流の整備体制を押さえること。どの出口市場でも原料コストの大半は伐採・搬出が占めます。安定した原料調達の仕組みを、行政の支援制度や地域の協働と組み合わせて設計できるかが成否を分けます。

第二に、カスケード利用で複数の出口を持つこと。単価の高い新素材、量を捌けるエネルギー、回転の速い食品・消費財を組み合わせ、1本の竹から複数の売上を得る構造をつくることで、事業の安定性が高まります。

第三に、競合の少なさを先行者利益に変えること。竹に特化した事業者は全国でも限られ、地域単位で見れば空白地帯が大半です。データが整備されていないこの分野では、独自に調査し先行して体制を築いたプレイヤーが情報優位を確立できます。

ポイント: 竹資源活用は、環境課題の解決と収益事業を両立できる数少ない領域です。脱プラとカーボンニュートラルという長期の追い風を背景に、上流の整備と複数の出口を束ねられる事業者にとって、静かに、しかし確実に広がりつつある市場と言えます。

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