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深刻化する放置竹林問題と対策の最前線

深刻化する放置竹林問題と対策の最前線を象徴するイメージ画像

全国の竹林面積は約16.7万haに達し、その多くが管理を離れて「放置竹林」となっています。本記事では、放置竹林問題がなぜ深刻化するのか、竹害がもたらすリスク、全国で広がる対策と支援制度、そして竹林整備をビジネスへと転換する最新の動きを、業界の視点から整理して報告します。

放置竹林問題とは——全国16.7万haの現状

放置竹林問題とは、タケノコ生産や竹材利用のために植えられ、あるいは自然に広がった竹林が、手入れをされないまま拡大し続けることで生じる一連の環境・社会課題を指します。農林水産省の統計では、国内の竹林面積は約16.7万haとされ、この数十年で着実に増加してきました。かつては生活に密着した資源であった竹が、需要の減少とともに管理の手を離れ、各地で「竹やぶ」が広がっています。

竹は成長が極めて速く、タケノコが地上に現れてからわずか2〜3か月で高さ十数メートルの成竹になります。地下茎(地下けい)を横に伸ばして繁殖するため、いったん管理が滞ると周囲の農地や人工林へと侵入し、面的に拡大していきます。この旺盛な成長力こそが竹の資源としての魅力である一方、放置された途端に「厄介者」へと転じる原因にもなっています。

放置竹林の問題は、単なる景観の悪化にとどまりません。農地への侵入による耕作放棄の加速、人工林の衰退、土砂災害リスクの増大、獣害の温床化など、地域社会の基盤に関わる複合的な課題として顕在化しています。人口減少と高齢化が進む中山間地域では、担い手の不足がこの問題をいっそう深刻にしています。

なぜ竹林は放置されるのか——構造的な悪循環

竹林が放置される背景には、需要の消失と担い手の不在という二つの構造的要因があります。かつて竹は、建材、農業資材、生活用品、食品と幅広く利用され、里山の重要な収入源でした。しかし、プラスチックや金属、安価な輸入竹製品への代替が進んだ結果、国内の竹材需要は大きく縮小しました。需要が失われれば竹林から収入が得られず、所有者が整備に費用を投じる動機は薄れます。

加えて、竹林所有者の高齢化と相続に伴う所有関係の複雑化が、整備の担い手不足に拍車をかけています。誰がどこまで管理するのかが曖昧になり、いざ整備しようとしても伐採・搬出のコストが収益を上回るため、結局は手をつけられないまま放置される——この悪循環が全国で繰り返されています。

放置竹林が拡大する悪循環 竹材の需要減少 代替素材・輸入品の普及 収入源の喪失 整備の動機が低下 管理放棄・高齢化 担い手の不足 竹林の拡大・竹害 農地・森林へ侵入

図1: 需要減少から管理放棄、竹害の拡大へと連鎖する悪循環。どこか一点を断ち切る仕組みづくりが求められます。

この悪循環を断ち切るには、いずれかの環に働きかける必要があります。竹材の新たな需要を創出する、整備コストを補助や協働で下げる、あるいは搬出した竹を収益化する——こうした複数の取り組みを組み合わせることが、放置竹林問題を解決に向かわせる鍵となります。

竹害がもたらす3つのリスク

放置竹林が引き起こす被害は「竹害」と総称されます。ここでは、業界や行政が特に重視する3つのリスクを整理します。

1. 農地・人工林への侵入

竹は地下茎を年間数メートル伸ばし、隣接する農地や杉・檜の人工林へと侵入します。侵入された農地は耕作が困難になり、人工林では竹が林冠を覆って樹木の生育を妨げ、森林の荒廃を招きます。境界を接する土地の所有者にとっては、自らの管理が及ばないところから被害が及ぶ深刻な問題です。

2. 土砂災害リスクの増大

竹の根は浅く広く張るため、深く根を張る樹木に比べて斜面を保持する力が弱いとされています。竹林化が進んだ斜面では、豪雨時に表層崩壊が起こりやすくなると指摘されており、防災上の観点からも放置竹林の整備が求められています。

3. 獣害の温床化と景観悪化

密生して見通しの悪くなった竹林は、イノシシやシカなどの隠れ場所となり、獣害を助長します。また、里山の荒廃した景観は地域の魅力を損ない、観光や定住の面でも負の影響を及ぼします。

放置竹林の拡大イメージ(地下茎の年間伸長の目安) 0m 3m 6m 管理下 約1m 放置1年 約3m 放置数年 6m超 地下茎の年間伸長の目安(概念図)

図2: 管理下では抑えられる竹の拡大も、放置されると地下茎を通じて加速度的に広がります(イメージ)。

全国で広がる対策と支援制度

深刻化する放置竹林問題に対し、行政と地域は少しずつ手を打ち始めています。中でも大きな役割を果たしているのが、2019年度に創設された森林環境譲与税です。市町村に配分されるこの財源を活用し、放置竹林の伐採・搬出への補助、竹チップ化機材の導入支援、整備団体への活動助成などを組み合わせる自治体が増えています。詳細は竹林整備事業のビジネスモデルで報告しています。

また、NPOや地域おこし協力隊、都市部の企業ボランティアが竹林整備に参加する協働型の取り組みも各地で広がっています。企業のCSR活動やチームビルディングと竹林整備を結びつけ、整備の担い手を外部から呼び込む動きです。伐採した竹を竹あかりのイベントや竹炭づくりに活用することで、整備そのものを地域の魅力づくりにつなげる事例も見られます。

制度面では、竹を伐採して搬出するだけでなく、搬出した竹をいかに収益化するかが持続可能性の分かれ目になります。補助金に依存した整備は一時的な効果にとどまりやすいため、竹材の出口となる事業と一体で設計することが、対策を長続きさせる上で重要になります。

「厄介者」から「資源」へ——整備のビジネス化

近年もっとも注目されるのは、放置竹林の整備そのものをビジネスとして成立させようとする動きです。竹をバイオマス燃料、竹パウダー、国産メンマ、竹由来新素材などへ転換し、伐採・搬出のコストを製品の売上で回収する仕組みが各地で試みられています。竹の各部位を用途別に使い分ける「カスケード利用」により、1本の竹から複数の収益を生み出す設計が現実味を帯びてきました。

ポイント: 放置竹林問題は「コストのかかる環境問題」であると同時に、「未活用の再生可能資源が眠る領域」でもあります。整備と出口事業を一体で設計できるプレイヤーにとっては、競合が少ない先行者利益の大きい分野と言えます。

竹資源の出口となる具体的な産業——バイオマスエネルギーや竹由来新素材の最新動向については、竹資源を変える新素材とバイオマス需要で詳しく報告します。放置竹林という課題を、地域の資源と収益に変える取り組みは、これからの中山間地域にとって重要なテーマとなっていくでしょう。

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