本ページでは、建築・内装分野の竹活用について、①建材として再評価される背景、②竹集成材の特性、③採用事例と市場動向、④バリューチェーン、⑤技術・認証の課題、の順に現況を報告します。建材メーカー、設計事務所、内装・家具事業者を読者に想定しています。

建材としての竹の再評価

竹は日本建築において、小舞壁の下地や垂木、装飾材として古くから使われてきた伝統的建材です。丸竹のままでは割れやすく寸法が不安定なため近代建築では脇役にとどまってきましたが、竹を短冊状のラミナに加工して接着積層する「竹集成材」の技術が確立したことで、床材・壁材・カウンター・家具など面材としての利用が可能になりました。

再評価の背景には、サステナブル建築の世界的潮流があります。建築物のライフサイクル全体でCO2排出を評価するホールライフカーボンの考え方が広がる中、成長の速い竹は「炭素固定の速い再生可能建材」として位置づけられます。ウッドショック以降の木材価格の変動も、代替素材として竹に目を向けるきっかけになりました。国内では放置竹林対策と結びついた「地域産竹材の建築利用」という文脈が加わり、自治体庁舎や公共施設での採用事例が生まれています。

大阪・関西万博をはじめとする大型イベントで木や竹など自然素材を使った空間演出が注目を集めたことも、設計業界における竹の認知を押し上げました。竹の内装空間は写真映えし、施設の話題づくりに寄与するため、商業施設の集客装置として意匠材の竹を指名するケースは今後も増えると見込まれています。

竹集成材の特性——木材との比較

竹集成材の物性は、広葉樹材に匹敵するか上回る水準にあります。特に曲げ・引張強度と表面硬度に優れ、傷がつきにくい床材として適性が高いとされます。一方で、糖分・デンプンを多く含むため防虫・防カビ処理が必須であること、接着剤を多用するため製造コストが高いことが弱点です。

加工技術の要点は、丸い稈から平らな部材を得る際の歩留まりと、色調・物性を安定させる熱処理にあります。竹は稈の外側と内側で密度が異なるため、ラミナの取り方や積層方向によって製品の性質が変わります。また、加熱処理(炭化処理)の温度・時間によって、明るいナチュラル色から深いブラウンまで色調を制御でき、これが竹集成材の意匠バリエーションを生んでいます。歩留まり向上と処理条件の標準化は、国産竹建材のコスト競争力を左右する技術課題として、公設試験研究機関やメーカーで改良が続けられています。

表1: 竹集成材と主要木質建材の比較(概略)
項目 竹集成材 広葉樹材(ナラ等) 針葉樹材(スギ等)
原料の再生期間 3〜5年で成竹 50年以上 40〜50年
強度・硬度 高い(床材適性が高い) 高い 中(軟らかい)
寸法安定性 積層加工で確保(丸竹は不安定) 比較的安定 比較的安定
防虫・防カビ 処理必須(糖分・デンプンが多い) 樹種による 樹種による
供給体制 国内は小規模。輸入(中国産)が主流 国産・輸入とも確立 国産供給網が確立

表1: 竹集成材と木質建材の概略比較。物性面の競争力に対し、国内供給体制の未成熟が最大のギャップです。

この比較からわかる通り、竹集成材は物性面では既存の広葉樹フローリングの代替候補になり得ます。課題は品質のばらつきと供給量であり、規格化・量産化が進めば、価格差の縮小とともに採用領域はさらに広がると見込まれます。

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採用事例と市場動向

世界的には、竹フローリングや竹集成材パネルは既に確立した市場であり、中国メーカーが供給の中心を担っています。欧米では環境認証(LEED等)の加点対象となることから、オフィスや商業施設の内装材として竹材が広く使われています。日本国内でも、輸入竹フローリングはホテル・商業施設・住宅で一定の採用実績があります。

採用側の評価ポイントは、意匠性・強度・環境性能の三点です。竹特有の節や繊維の表情は他の木質材にない意匠として設計者に好まれ、表面硬度の高さは土足歩行の商業空間でも耐久性を発揮します。加えて、成長の速い竹を使うこと自体が施設の環境方針の表明になるため、ESG情報開示に取り組む企業のオフィスや店舗で「語れる内装材」としての需要が生まれています。

国内産竹材の建築利用は緒に就いた段階ですが、動きは確実に増えています。熊本県では竹集成材・竹ボードを製造するバンブーマテリアルの取り組みが知られ、エネルギー事業(バンブーエナジー)と一体化した竹材コンビナート型のモデルを構築しています。また、地域産の竹を使った庁舎・道の駅・学校の内装、竹あかりを含む商業空間の装飾、デザイナーズ家具など、意匠性と地域ストーリーを訴求する採用が広がっています。設計者側にも、木材利用促進法の改正(建築物木材利用促進法)以降、非住宅建築で自然素材を使う動機が強まっており、竹はその選択肢に入り始めています。

家具・プロダクト分野の広がり

建築本体より動きが速いのが家具・プロダクト分野です。竹集成材の天板を使ったデスクやテーブル、竹合板の椅子、オフィスの受付什器など、単品から導入できる製品はサステナブル調達を掲げる企業に採用されやすく、竹建材の「入口商品」として機能しています。国内の家具メーカーや地域工房が竹材加工に参入する例も増えており、デザインコンペや展示会を通じて竹プロダクトの露出が高まっています。内装・家具で実績と加工ノウハウを蓄積し、建材へ段階的に進む成長経路が現実的とされています。

竹建材のバリューチェーン

竹建材の製造は、伐採から製品化まで多段階の加工を要します。国内で事業化する場合、以下の各工程をどこまで内製し、どこを既存の木材加工インフラと共用するかが投資判断の焦点になります。

  1. 伐採・選別竹齢3〜5年の良質な稈を選別して伐採
  2. 玉切り・割裂所定寸法に切断し、短冊状に割裂
  3. 加熱・防虫処理煮沸・炭化処理で糖分除去と色調調整
  4. ラミナ加工乾燥・プレーナー加工で積層用部材を製作
  5. 接着・積層プレスで集成材・ボードに成形
  6. 製品化・施工フローリング・パネル・家具に加工し施工

図1: 竹集成材のバリューチェーン。加熱・防虫処理と乾燥管理が品質を左右する竹特有の工程です。

コスト面では、竹齢を見極めた選別伐採が必要なため、チップ用の皆伐より原料単価が高くなります。その分、製品単価も高く設定できるため、原料の一部を建材用に、残りをチップ・パウダー用に振り分けるカスケード設計が有効です。バイオマス新素材との設備・収集網の共用は、国内竹建材の価格競争力を高める現実的な道筋とされています。

なお、竹材の伐採適期は秋から冬とされ、この時期の竹は含水率と糖分が比較的低く、建材用途に適します。伐採時期の管理は防虫性・耐久性の面でも品質を大きく左右するため、竹害対策の皆伐とは異なる「建材用の計画伐採」の体制づくりが、供給側の実務課題になります。

技術・認証の課題

国内で竹建材市場を広げる上での課題は三つあります。第一に防虫・防カビ処理の徹底です。竹は糖分・デンプンを多く含み、処理が不十分だとチャタテムシやカビの被害が生じます。加熱処理・ホウ酸処理などの標準化が品質信頼の前提です。第二に建築基準・認証への対応です。構造材として使うには強度等級や耐火性能のデータ整備が必要で、現状の国内利用は内装・家具など非構造用途が中心です。JAS規格上も竹集成材の位置づけは発展途上であり、業界としてのデータ蓄積が求められています。

第三に供給の安定性です。設計者が竹材を指定しても、必要な量・品質・納期で国産竹材を供給できる事業者はまだ限られています。逆に言えば、品質規格と供給体制を先に整えたプレイヤーが、公共案件や大手デベロッパー案件の指名を獲得しやすい状況です。

価格面では、国産竹集成材は輸入品や一般木材に比べて割高になるのが現状です。ただし、非住宅の内装計画では材料費の差額が全体工事費に占める割合は小さく、環境価値や話題性で回収できるという判断から採用に至るケースが多いと報告されています。「高いが選ばれる理由」を設計者に説明できるデータと事例集の整備が、供給側の営業上の実務課題です。

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事業機会の視点

建築・内装分野の竹活用は、「高単価だが立ち上がりに時間がかかる」市場です。短期的には、意匠性を武器にした内装・家具・什器のスモールスタートが現実的で、飲食店・ホテル・オフィスのリニューアル需要と相性が良いとされます。中期的には、公共建築の地域産材利用や、環境認証を重視する大手企業のオフィス需要が成長ドライバーになります。

ポイント: 参入評価では、①防虫・乾燥処理の技術確立、②木材加工インフラ(プレカット工場・家具工場)との連携可能性、③設計事務所・工務店への提案チャネル、の3点が鍵になります。CLTなど木質建材の普及動向と並走して観察することをお勧めします。

中長期では、公共調達が市場形成の後押しになる可能性があります。国や自治体の建築物における木材利用促進の枠組みの中で、地域産竹材が「地域材」として扱われれば、庁舎・学校・公営施設の内装に竹が指定される道が開けます。地域の竹を地域の公共空間で使う循環は、住民への放置竹林対策の見える化としても機能するため、自治体側の動機も強く、供給体制さえ整えば需要は立ち上がりやすい領域と考えられています。

次ページでは、あらゆる竹ビジネスの土台となる竹林整備事業のビジネスモデルと支援制度を報告します。