竹ストローと歯ブラシが変える先住民の収入と森の価値
ニュースの概要
フィリピンの社会的企業Bambuhayが、シエラマドレ山地に暮らすブグカロット族とドゥマガット族から竹を買い取り、竹製ストローや歯ブラシを作って販売している。買い取りは公正な価格で行い、製造や植林の現場でも地元の人々を雇う仕組みだ。同社は脱プラスチック製品への需要を追い風に生産を広げており、2027年にはブルネイと北米への輸出を始める計画である。歯ブラシには植物由来の毛を使い、持ち手には絶滅の危機にある動物の絵柄を入れて、環境への配慮と売りやすさを両立させている。森を守る人々が収益を得る循環を、商品の形にした事例といえる。
引用元: フィリピンの竹事業、先住民と連携し北米・ブルネイ輸出へ(BusinessWorld)
分析・見解
原料を売るだけの立場から、製品の作り手へ
竹の産地では、原料を安く売って終わりになりがちだった。加工で生まれる利益は、都市部や海外の企業が持っていく。Bambuhayの特徴は、先住民が原料の供給者にとどまらず、製造と植林にも加わる点にある。
買い取り価格を公正に保つことも重要だ。コーヒーやカカオのフェアトレード(=公正な取引)で、価格の下支えが生産者の暮らしを安定させた例は多い。竹でも同じ構図が成り立てば、山の暮らしを守る動機が収入と結びつく。
竹ストローと歯ブラシが選ばれる理由
竹は成長が速く、数年で収穫できる。植林した木が育つまで何十年も待つ必要がない。しかも切り出したあとに地下茎から再び芽が出るので、計画的に刈れば森は維持される。
ストローと歯ブラシは、使い捨てに近く、プラスチックの代替が分かりやすい商品だ。消費者は一目で意味を理解できる。単価は低くても数が出るため、地域の加工場でも量を確保しやすい。
さらに、歯ブラシの毛に植物由来の素材を使い、持ち手に絶滅危惧動物の図柄を入れたことが効いている。環境の話を、手に取った瞬間の物語に変えているからだ。
輸出計画の壁は品質管理と認証にある
北米やブルネイへの輸出は、売り先が広がる一方で、基準も厳しくなる。口に入れる商品なので、食品に触れる素材の安全基準が問われる。竹は湿気でカビが出やすく、乾燥や防腐の工程にばらつきがあると、返品に直結する。
日本の竹製品でも、割れや黒ずみによるクレームが普及の足かせになってきた。小さな加工場が数多く関わる体制では、検品の手順を統一できるかが鍵になる。
また、先住民との連携を看板にする以上、取引の実態が見える形で示せなければ、環境をうたいながら実態が伴わないという批判を受けかねない。
日本の放置竹林への視点
日本では、管理されない竹林が広がり、周辺の山林や住宅地に悪影響を与えている。多くの自治体が伐採費用に悩み、切った竹の行き先がない。
この事例が教えるのは、竹を処分する対象ではなく、売れる商品の原料として見直す発想だ。ただし日本は人件費が高く、手作業中心の竹加工では価格競争に勝てない。そこで、地域の物語と品質を価格に乗せられる高付加価値の商品に絞る戦略が現実的になる。
ビジネスへの影響
竹の事業化で最初に確認すべき三点
竹製品を新規事業にする企業は、まず原料の安定調達を確認したい。竹林の所有者が分散していると、伐採の同意取りだけで時間を使う。次に、加工場の確保と乾燥工程の管理だ。最後に、売り先のロットと価格である。量産できても、売り先が決まっていなければ在庫が積み上がる。
ストローや歯ブラシのような小物は参入しやすい。しかし競合も多いので、素材の産地や関わる人を明示して、他社との違いを作ることが欠かせない。
地域や先住民との連携を強みに変える方法
地域の担い手を雇用し、買い取り価格を公開する取り組みは、取引先や消費者への説明材料になる。企業の調達方針で、人権や環境への配慮を求める動きが強まっているため、取引の透明性は営業上の武器になる。
自治体と組む場合も、竹の伐採から製品化までを地域内で完結させる形にすれば、補助金や広報の協力を得やすい。
輸出を見据えた準備の進め方
海外販売を視野に入れるなら、早い段階で食品接触や化学物質に関する基準を調べておきたい。試作品を現地の検査機関で確認し、問題点を洗い出してから量産に進む。小ロットで試し売りを重ね、返品理由を記録して工程に戻す。この地道な繰り返しが、輸出の成否を分ける。