江西省上猶県の竹産業、素材売りから製品づくりへ転換
ニュースの概要
中国江西省の上猶県は、国内有数の竹の産地として知られる。その竹の使い道が、これまでの原料出荷中心から、建築材料、竹繊維、竹炭といった付加価値の高い分野へ広がっている。現地企業では竹繊維を使ったインソールなどの製品がすでに生産されている。2025年12月時点で、県の竹産業の総生産額は8億8,300万元に達した。製品は30か国・地域以上に輸出されている。竹をそのまま売る段階から、加工して製品として売る段階へと、産業の重心が移りつつある事例である。
引用元: 中国・江西省上猶県、竹産業を建材・繊維・竹炭へ高付加価値化(Xinhua)
分析・見解
原料を売る産地から、製品を売る産地への転換
竹の産地が抱える共通の悩みは、売値が上がらないことだ。伐採した竹をそのまま出荷すると、価格は相場に左右される。加工度が低いほど、付加価値は川下の企業に吸い上げられる。上猶県の動きは、この構造を変える試みと読める。
注目したいのは、用途を一つに絞っていない点である。建材、繊維、竹炭という三本柱は、それぞれ買い手も売り方も違う。一つの市場が冷え込んでも、別の用途で需要を受け止められる。これは農産物の六次産業化(=生産、加工、販売を一体で行うこと)に近い考え方である。
竹の部位ごとに使い道を割り振る発想
竹は、幹、枝、根、削りくずまで使い道がある。幹は建材や繊維に回せる。端材やくずは炭にできる。つまり、捨てる部分を出さない設計が可能になる。
竹繊維は、綿や化学繊維と比べて吸湿性や消臭性が語られることが多い。インソールのように、足元の蒸れや臭いが気になる製品とは相性がよい。素材の弱点を製品の売り文句に変える工夫が、ここにはある。
8億8,300万元という数字の読み方
8億8,300万元は、日本円でおよそ180億円前後に相当する。県単位の産業としては、決して小さくない。ただし、この数字は原料から加工品までの総額である。どの用途がどれだけ稼いでいるかは、記事からは分からない。
輸出が30か国・地域以上に及ぶ点も重要だ。取引先が多いと、特定の国の景気や規制に振り回されにくい。一方で、品質基準や認証への対応は国ごとに異なる。販路の広さは強みであると同時に、管理の負担でもある。
日本の竹林と比べて見える違い
日本では、手入れされない竹林の拡大が各地で問題になっている。竹は成長が早く、放置すると周囲の森や畑に広がる。伐る人手がなく、伐っても売り先がない。この悪循環が続いている。
上猶県との違いは、売り先を先に作っている点だ。日本では竹を減らすことが目的になりやすい。中国の事例は、需要を先に育てれば、竹は処分すべき厄介者から稼げる資源に変わることを示している。ただし、人件費や規模の差があり、同じ道筋をそのまま真似することはできない。
ビジネスへの影響
竹を扱う事業者が最初に確認すべきこと
自社が原料を売る側なのか、製品を売る側なのかを、まず整理したい。原料売りのまま価格競争に巻き込まれているなら、上猶県の事例は警告にもなる。中国産の竹製品や竹繊維がさらに増えれば、日本の市場でも価格圧力が強まる可能性がある。
対策として現実的なのは、全部を自社でやろうとしないことだ。繊維や炭は設備投資が重い。加工を担う企業と組み、自社は安定した原料供給や地域の信頼で役割を果たす形が、小さな事業者には向いている。
製品化に踏み出す際の三つの判断軸
一つ目は、最終製品の買い手を先に決めることである。インソールのように、用途がはっきりした商品から入ると売り先を想像しやすい。二つ目は、端材の出口を確保することだ。竹炭のように、残りを活かす用途を組み込むと、廃棄コストが下がる。三つ目は、輸出や大口取引を意識した品質管理である。
自治体や企業が検討する際は、小さく試すのが安全である。まず少量の試作品を作り、地元の店やオンラインで反応を見る。そのうえで、設備や人員に投資するかを決めればよい。需要の確認より先に設備を買うと、回収できなくなる。