竹の活性炭が伸びる理由 放置竹林を水の浄化材へ
ニュースの概要
調査会社ResearchAndMarketsが、竹を原料にした粒状活性炭の世界市場予測を公表した。2026年に1億2,088万ドルの市場は、年平均5.63%で伸び、2032年には1億6,827万ドルに達する見通しである。竹を炭にして、さらに高温の蒸気などで細かな穴を作ったものが粒状活性炭だ。水道水や排水の浄化、空気やガスの処理、工場の工程、家庭用浄水器などに使われる。水処理の需要拡大と、環境負荷の小さいろ過材への関心が成長を支える背景として挙げられている。
引用元: 竹由来粒状活性炭市場、2032年に1億6,827万ドル規模へ(GlobeNewswire)
分析・見解
年5.6%成長は急拡大ではなく、着実な置き換えの数字
年平均5.63%という伸びは、爆発的とは言いにくい。市場規模も2032年で約1億7,000万ドルと、活性炭全体から見れば小さな一角である。この数字が示すのは、新しい用途が突然生まれるというより、既存の原料からの置き換えが少しずつ進む姿だ。
活性炭の主な原料は、石炭、ヤシ殻、木材である。そこに竹が加わる。つまり竹は、需要を奪い合う側ではなく、選択肢を増やす側にいる。
竹が原料として評価される三つの性質
一つ目は成長の速さだ。竹は種類によっては数年で資源として使える大きさになる。木材より回収サイクルが短く、原料の調達計画を立てやすい。
二つ目は、炭にしたときの構造である。竹は繊維が縦に通っており、細かな穴を作りやすいとされる。ただし吸着性能は原料だけでなく、活性化の温度や時間でも大きく変わる。竹なら必ず高性能、とは言えない点には注意したい。
三つ目は説明のしやすさだ。再生可能な植物原料であることは、企業が環境報告で示す材料になる。
ヤシ殻の価格変動と、国内の放置竹林がつながる
粒状活性炭ではヤシ殻系が大きな位置を占めてきた。東南アジアなど限られた産地に依存するため、天候や輸送費、為替の影響を受けやすい。調達先を分散したい購入者にとって、竹は代替候補になる。
日本に目を向けると、手入れされない竹林が各地で広がり、里山の荒廃や獣害の一因になっている。この竹を伐採して炭化し、活性炭に加工できれば、廃棄物処理費がかかる資源が、販売できる素材に変わる。これが本記事で最も強調したい視点である。海外の市場予測は、国内の竹林問題に対して出口の候補を示している。
乗り越えるべきは、量と品質のそろえ方
課題も明確だ。浄水用途では、品質が毎回ほぼ同じであることが求められる。山で集めた竹は、種類、太さ、乾き具合がばらつきやすい。活性化には高温設備も要るため、設備投資も軽くない。
加えて、伐採から運搬までの人手がかかる。ここを解決できない事業は、原料が安くても採算が合わない。市場の伸びを追う前に、安定して竹を集める仕組みが先に必要になる。
ビジネスへの影響
竹林を持つ側は、販売先を先に決めてから動く
自治体、森林組合、土地所有者にとって、活性炭は有力な出口の一つである。ただし、先に伐採を始めて売り先を探すのは危うい。まず水処理会社や浄水器メーカーに、必要な粒の大きさ、吸着性能、年間の数量を聞くべきだ。
小さく始めるなら、竹炭としての販売や、土壌改良材、消臭材といった要求の低い用途を足がかりにし、品質の実績を積む方法がある。段階的に高い品質の用途へ進む形が現実的である。
購入する側は、調達先の分散と性能試験を並行させる
水処理や空気処理の事業者にとって、竹由来品は調達先を増やす手段になる。見るべき点は、価格だけではない。ヨウ素吸着量などの性能値、粉の出にくさ、再生利用のしやすさ、ロットごとのばらつきを確認したい。
小規模な試験導入で実際の水質データを取り、既存品と並べて比べるとよい。環境面の価値は、性能が同等以上であって初めて意味を持つ。
新規参入では、環境価値の見せ方も設計に入れる
竹由来であることは、販売時の訴求点になる。放置竹林の整備につながる、地域雇用を生む、といった物語は、法人の購買担当者や自治体にも伝わりやすい。一方で、効果の根拠が曖昧な表現は信頼を損なう。
伐採量、炭素の扱い、製造時のエネルギー使用量を数字で示せる体制を最初から整えておくことが、長く取引を続けるための条件になる。