ホーム › ブログ › 竹繊維の卵パックが示す、放置竹林を資源に変える循環型ビジネスの条件

竹繊維の卵パックが示す、放置竹林を資源に変える循環型ビジネスの条件

竹繊維の卵パックが示す、放置竹林を資源に変える循環型ビジネスの条件を象徴するイメージ画像

ニュースの概要

中国・湖南省懐化市の加工工場で、竹を細かな繊維にして成形し、卵パックやテイクアウト容器、スーパー向けの包装材をつくる動きが広がっている。竹が持つ天然の抗菌性、軽さ、強さを生かし、使い捨てプラスチックの置き換えを狙うものだ。中国は2022年に国際竹藤機関と「竹によるプラスチック代替」構想を始めており、今回の生産拡大はその流れの中にある。竹産業は、単純な加工から付加価値の高い製品づくりへ、そして用途の拡大へと軸足を移しつつある。

引用元: 中国、竹繊維を使った食品包装でプラスチック代替を拡大(China Daily)

分析・見解

卵パックから始まるのは、量と単価のバランスが取りやすいから

竹繊維の製品として、卵パックやテイクアウト容器が選ばれたのには理由がある。形が単純で、金型の種類が少なくて済む。しかも需要は毎日発生し、数量が大きい。新素材は最初の用途選びで失敗しやすい。高機能だが売れる数が少ない分野から入ると、設備投資を回収できないからだ。

古紙を原料とするパルプモールド(=紙を型に流し込んで固めた容器)は、すでに卵パックの定番である。竹繊維はその置き換え候補となる。竹は繊維が長くて硬く、紙より強い容器をつくりやすい。抗菌性がうたわれる点も、食品用途では強みになる。ただし抗菌性の程度は製法で変わるため、数字で示せるかどうかが競争力を分ける。

竹は成長が速く、原料の確保で有利になる

竹の大きな特徴は、成長の速さにある。木材が数十年かかる量を、竹は数年で得られる。伐採してもすぐ次の竹が伸びる。このため、森林資源への負担を抑えた原料として位置づけやすい。中国は世界有数の竹資源国で、湖南省や浙江省など主要産地に加工業が集まる。原料の調達から加工まで近い距離でつながることが、価格面の強みになっている。

中国政府が構想として打ち出したことも見逃せない。国の方針があると、地方自治体が補助や用地の面で動きやすい。工場が増えれば、機械メーカーや配送業者も集まり、産地ごとの産業クラスターが育つ。素材そのものより、周辺の仕組みが競争力をつくる典型例である。

日本の放置竹林は、中国型の量産とは別の道が必要

日本では、放置された竹林が里山を侵食し、問題になっている。本サイトでも何度も取り上げてきたとおりだ。この話と中国の動きを並べると、ひとつの違いが見える。中国は竹を計画的に育てて使う産業である。日本は、増えすぎた竹を処分する側から出発している。

日本の竹は、細く曲がったものや、切り出しにくい斜面のものが多い。収集費用が高く、原料の質も安定しない。中国と同じ土俵で価格競争をしても勝てない。日本が目指すべきは、量ではなく、地域ごとの小規模な循環と、物語を添えた高単価の製品だろう。

本当の競争は「プラスチックより安いか」ではない

この分野で見落とされがちな視点がある。竹繊維容器の相手は、実はプラスチックだけではない。紙、サトウキビ搾りかすの容器、バイオプラスチックなど、代替素材はすでに複数ある。竹は後発である。後発が勝つには、竹ならではの理由が必要になる。

その理由は、原料の確保にあるのではなく、自治体の竹林再生や観光、ブランド化と結びつけられる点にある。同じ容器でも、里山を守る取り組みの一部だと伝えられれば、買う側の納得感が違う。素材の性能より、誰がどんな目的で買うかが勝負を決める。

ビジネスへの影響

食品事業者は、容器を「コスト」から「伝える手段」へ見直せる

飲食店、食品メーカー、小売店にとって、包装は原価を押し上げる項目だった。だが環境配慮の包装は、売り場での説明材料にもなる。たとえば地元の竹林整備と連動した容器を使えば、商品の背景を語れる。価格に少し上乗せしても、理由が明確なら受け入れられやすい。

まずは、少量の限定商品で試すのが現実的だ。贈答用の卵、土産菓子、イベント用のテイクアウト容器などが候補になる。反応を見てから、通常商品に広げればよい。

導入前に確認したい、衛生・耐水・価格の三点

実際に採用する際は、三つを確認したい。第一に、食品衛生法に適合しているか。接着剤や防水加工に使う薬剤まで含めて、試験結果を取り寄せる。第二に、水分や油分への強さである。汁気のある総菜では、紙系容器は染み出しやすい。第三に、継続して仕入れられるか。小さな工房の製品は、数量が増えたときに供給が追いつかない恐れがある。

輸入品を含めて複数の仕入れ先を比べ、価格だけでなく、納期と品質のばらつきも見ること。

竹関連事業者は、用途の絞り込みと連携が鍵になる

竹を扱う事業者にとって、今回の動きは脅威でもあり機会でもある。中国産の安い製品が入れば、価格では不利になる。だが、日本の竹を使った地域発の容器、という付加価値は、輸入品には真似できない。

自治体、飲食店、観光施設と組み、竹林の整備から容器の回収までをひとつの輪にすると、事業としての説得力が増す。補助金に頼るだけでなく、買い手を最初から巻き込むことが、長続きの条件になる。

関連記事

ブログ一覧へ戻る