アッサム州発・竹製自転車の公共試験導入に学ぶ、竹産業化を成功させる仕組みづくりとは
ニュースの概要
インド・アッサム州のサルマ州首相が、竹だけで作られた自転車をグワハティ市内の公園で一般試験導入すると発表した。製造を担うのはプネー拠点のBamboo India社で、州内に眠る竹資源を本格的な産業に育てる象徴事業と位置づけられている。竹は自転車だけでなく、メタノールや航空燃料、建材の補強材など幅広い用途に使えると州側は強調しており、すでにBIS(インド規格局)の認証も取得済みだ。商業展開に先立ち、まずは公園という生活動線の近くで市民の反応を見る段階に入った。一地方の実証実験でありながら、資源の産業化という視点では国内の竹問題にも通じる取り組みと言える。
引用元: アッサム州、竹製自転車の公共試験導入を発表(ANI)
分析・見解
「乗り物」から入る普及戦略が意味すること
竹製品の普及で難しいのは、品質への不安をどう払拭するかだ。アッサム州は家具や食器ではなく、自転車という毎日使い壊れたら困る乗り物を試験導入の対象に選んだ。耐久性への疑いを公共の場で実地に晴らす狙いがあると見てよい。公園という生活動線の近くに置くのも、観賞用ではなく実用品として竹を印象づける工夫だろう。
実際、竹製自転車は2010年代からケニアやガーナでも生産されてきたが、量産化までたどり着いた例は少ない。アッサム州の試みは、行政が前面に出て普及の後押しをする点で一線を画す。
インド規格局(BIS)の認証取得という工業規格クリアの壁
今回の発表で見落とせないのが、インド規格局(BIS)の認証をすでに取得済みという点だ。竹は天然素材ゆえに強度や寸法にばらつきが出やすく、量産品として規格化するのは容易ではない。認証取得を商業展開より前に済ませたという順序は、行政が竹産業化を掛け声で終わらせず、品質保証の仕組みから作り込んでいる証拠といえる。
国内の竹材を扱う事業者から話を聞くと、規格や強度試験のデータが乏しく、建材や家具として大口商談に進めない事例が多い。認証という地味な工程を先に片づける発想は、国内企業が見習うべき順序だ。
自転車は入口、本命はメタノールと航空燃料への展開
州側が強調した用途の幅は興味深い。自転車は市民の目に触れる広告塔であり、本命はメタノール(燃料化)や航空燃料、建材の補強材といった高付加価値の用途にある。竹を燃料化する技術自体は、国内でも竹チップのバイオマス発電として実用化が進んでおり目新しくはない。重要なのは、一つの資源に複数の出口を同時に用意し、需要が一つ途絶えても産業全体が揺らがない設計にしている点だ。
国内では竹チップのバイオマス発電が各地で稼働しているが、発電だけに依存する事業は燃料価格の変動で採算が揺れやすい。航空燃料やメタノールへの展開余地を残す設計は、資源の出口を複線化する発想として参考になる。
州主導の垂直統合モデルと、国内の分散モデルの違い
アッサム州のモデルは、製造(プネー拠点企業)・認証(BIS)・実証の場(州有公園)を行政が一体で手配する垂直統合型だ。対して国内の竹産業は、伐採者、加工業者、自治体の補助金がばらばらに動く分散型が多く、量産化の手前で止まりやすい。この違いは、放置竹問題の解決速度を左右する要因として注目に値する。
たとえば竹林整備事業の多くは、伐採・運搬・加工の各工程を別々の補助金制度で支える形が多く、川下の需要開拓まで手が回りにくい。アッサム州のように行政が完成品の出口まで設計する発想は、国内の制度設計にも応用できる余地がある。
ビジネスへの影響
国内企業が参考にすべき「実証の置き場所」という発想
放置竹問題に取り組む国内企業や自治体にとって参考になるのは、技術そのものより実証実験の置き場所の選び方だ。工場や展示会ではなく、住民が日常的に通る公園に置くことで、消費者向けの信頼獲得と行政向けの政策アピールを同時に狙っている。竹製品を開発する企業は、量産ラインに投資する前に、こうした生活動線での実地テストを設計に組み込む価値がある。行政が「誰のための実証か」を明確にした設計だと言える。
規格化・認証取得への投資は後回しにできない
竹は品質にばらつきが出やすい素材であり、強度や耐久性を公的な基準で裏づけない限り、個人向け以上の商談には進みにくい。アッサム州がBIS(インド規格局)の認証を商業展開前に取得した順序は、国内で竹建材や竹家具を扱う企業にも当てはまる教訓だ。規格や第三者機関の認証取得を、試作段階の早い時期から並走させる計画が欠かせない。認証取得には数か月単位の時間がかかるため、商品企画と並行して着手するほうが結果的に早い。
一つの資源に複数の出口を持たせる設計が生存戦略になる
竹チップの燃料化、建材の補強材、自転車のような完成品という複数用途を同時に持つ設計は、単一の販路に依存するリスクを下げる。放置竹の活用を検討する事業者は、主力商品が売れ行き不振に陥っても別の出口で資源を回収できるよう、最初から複数の販路を前提にした事業計画を描くべきだろう。複数出口を前提にすることで、投資回収までの時間軸も分散でき、資金繰りの安定にもつながる。